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2016年度

第348回 ガスクロマトグラフィー研究会特別講演会開催報告

2016年11月25日(金),北とぴあ(東京都北区)13階飛鳥ホールにおいて,第348回 ガスクロマトグラフィー研究会特別講演会が開催されました。「社会の安全・安心を守るガスクロマトグラフィー」を講演主題とし,薬物関連分析で活躍するGC,GC/MSを副題とした3題の招待講演と5題の技術講演が行われました。日常気づかない様々な分野でGCやGC-MSは利用され,社会の安全・安心を守り豊かな生活を支えています。今回のテーマとして選ばれた分野はとても幅広いものではありましたが,様々な分野で活躍されている第一線の研究者の皆様から興味ある話題を提供頂きました。例年より早い開催となりましたが,100名以上の参加者があり大盛況のうちに講演会が終了しました。

特別講演1題目は山田 雅之先生((公財)競走馬理化学研究所)より「競走馬における薬物検査の現状」と題してご講演を頂きました。競馬レースにおいてレースの公正確保は重要な課題であるため,禁止薬物を検査する業務は大変重要な業務であることが分かりました。薬物検査では,主にGC-MSやLC-MS等が用いられており,同定基準はAORC(Association of Official Racing Chemists)で決められており,多様化する違反薬物の同定基準をAORCで定めているとのことです。また,近年注目されている薬物や分析法のご紹介もあり,測定方法だけではなく,前処理方法についてもご紹介頂きました。

特別講演2題目は辻川 健治先生(科学警察研究所法科学第三部化学第一研究室)より「法薬毒物分野における違法薬物検査の現状」と題してご講演を頂きました。違法薬物についての法規制や取り締まりの現状などの総論を初め,様々な薬物検査の方法についてのご紹介を頂きました。さらに,実際に検査を行う立場からの分析法の弱点や装置についての注意点を教えて頂き,現場に戻ってすぐに活用できると思いました。最後に薬物プロファイリング分析についてのご講演を頂き,今後の課題についても実例を持って紹介して頂きました。

招待講演は植木 真琴先生 (カタールアンチドーピングラボラトリー)より「ドーピング検査の現状」と題してご講演を頂きました。ステロイド薬トゥリナボールのGC-NPD測定例を初めに,薬物測定のGC,GC-MSへの係わりをお話しいただいてから,世界アンチ・ドーピング機構(WADA)で常時禁止されている化学物質のご紹介を頂きました。新しい測定方法としては,ステロイド由来の薬物を調べるGC燃焼安定同位体比質量分析計の紹介がありました。また,リオデジャネイロ五輪の直前に話題となりましたロシアチームの組織的なドーピング手法の紹介もあり,ドーピングについて様々な側面からのお話しは大変興味深く感じました。

技術講演1題目は佐々野僚一氏((株)アイスティサイエンス)より「固相誘導体化によるメタボローム分析」と題して,アミノ酸を保持させる陽イオン交換樹脂と有機酸を保持させる陰イオン交換樹脂の新しい積層固相カートリッジによるメタボロームの迅速分析とオンライン固相抽出GC-MSのご紹介を頂きました。

技術講演2題目は小笠原亮氏(アジレントテクノロジー(株))より「GC/Q-TOFによる薬物分析」と題して,同社のGC/Q-TOFによる薬物分析のアプリケーションを中心にご紹介を頂きました。 

技術講演3題目は坂井健朗氏((株)島津製作所)より「GC-MSによる生体試料中の短鎖脂肪酸の分析」と題して,生体試料において揮発しやすい短鎖脂肪酸を新しい誘導体化を用いた前処理からGC-MSの測定までのご紹介を頂きました。

技術講演4題目は渡辺壱氏(フロンティア・ラボ(株))より「前処理装置を用いたGC/MS法の法科学への応用例」と題して,前処理装置パイロライザーを用いた法科学分野に対応したGC-MS測定のご紹介を頂きました。
技術講演5題目は土屋文彦氏(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))より「高分解能GC-MSを用いた検体間比較の有効性とワークフロー」と題して,同社の取り扱っている高分解GC-MSのご紹介と今後のGC-MS分析の展望についてご講演を頂きました。

昼食や技術講演の間にありました休憩時間では,関連企業の製品やカタログ展示があり,新製品の情報やアプリケーションの紹介もあり多くの方々が情報収集を行っておりました。

最後に前田恒昭委員長により閉会のご挨拶があり,その後,17階にあるレストラン山海亭に場を移して意見交換会が行われました。大勢の方が意見交換会に参加されて活発な意見が飛び交わされ,参加者の親睦も深められて大変有意義な時間を過ごすことが出来ました。

(株式会社日立ハイテクサイエンス) 大川 真

 

 

第344回ガスクロマトグラフィー研究会・見学会開催報告

 第344回ガスクロマトグラフィー研究会・見学会は、(株)伊藤園様の御協力を得て、同社の静岡相良工場および併設される中央研究所にお伺いし開催させていただきました。御講演を頂いたあとに研究所と工場の見学をさせて頂きました。

 (株)伊藤園の静岡相良工場と中央研究所は茶処の静岡県牧之原市の茶畑に囲まれた約61000m2の敷地内に立地し、製造部門と研究開発部門を合わせて、約400名の方が勤務されています。1974年に同工場(リーフ茶包装工場)が完成し、その後、2001年に麦茶ティーバッグ工場が完成、2006年に粉末茶包装ラインを導入、2009年にリーフ包装新ラインを導入、2013年にはコーヒー焙煎加工新工場を建設、2016年には抹茶工房の建設と、拡大を続けています。お客様の安心と安全に応えるために2000年にはISO14001認証、2002年にISO9001認証、2013年にFSSC22000認証を取得されています。敷地内に併設される中央研究所は1986年に完成し、2001年には中央研究所第二研究棟が建設されています。

  当日の研究会では、まず(株)伊藤園の中央研究所の岡野谷和則様より「緑茶のおいしさと品質について」という演題で御講演をいただきました。茶の歴史のお話から、茶のおいしさに関わる呈味成分や香気成分、それらの加工工程中での変化、オリなどの品質に関わる物質、官能検査方法について大変興味深い御講演いただきました。 お茶のおいしさの奥深さと、その難解な課題に果敢に挑戦される取組みを学びました。引き続いて品質管理二部の 荒川正人様より「伊藤園の残留農薬分析への取り組み」について御講演をいただきました。年間5000検体の農薬分析に対応するために取り組まれたQuEChERS法や超臨界抽出法についてのお話、感度向上と測定時間短縮のために導入されたLC-MS/MS分析についての御報告があり、同社の製品の安心と安全を守る品質管理体制を学びました。

  中央研究所の見学では、同社の香気分析、味成分、栄養成分、農産物原料を分析するための最先端の分析装置を見学しました。実験室、建物全体の隅々まで非常に整理整頓、清潔感が行き届き、安全と環境にも極めて高い配慮をされていることに大変感銘を受けました。 廊下から大きなガラス越しに実験室内全体を見渡せるようになっており、見学に来られたお客様が、同社の研究開発と品質管理体制に高い信頼を寄せられるであろうと実感いたしました。 その後の工場見学では、心休まるお茶の香りが漂うリーフ茶の包装工場、粉末茶の包装工場を見学させて頂きました。最先端の機械を導入された工場で、衛生面に細心の気配りをし、最高の品質、安心と安全を追求された工場は印象深く感動いたしました。そして「タリーズ」で使用するコーヒー豆の焙煎加工工場を、コーヒー豆の香しさを感じながら見学させて頂き、同社のこだわりの絶品コーヒーが出来上がる所以を知ることができたと思います。

  最後のお茶の試飲では、ミルクを連想させるような甘い香りが特徴の「かなやみどり」を試飲しました。抽出温度、抽出時間、茶葉の量、湯量によってお茶の味が変化することを教わり、特に低い閾値の渋味成分が抽出温度によって大きく異なることを試飲で実感いたしました。

  3時間に渡る講演会・見学会は瞬く間に終了し、第344回ガスクロマトグラフィー研究会・見学会を終えました。今回訪問させていただいた(株)伊藤園の静岡相良工場と中央研究所は,同社の開発と生産の中枢を担う組織であり、同社の商品開発への挑戦、衛生や品質管理に強い責任をもった取り組みに、同じ食品会社に勤務する者として強く感銘を受けました。この地に見学に訪れた方々がより一層益々、伊藤園のファンになって行かれることを感じ、伊藤園の商品が愛される理由を知ることができる訪問でありました。

  最後になりましたが,岡野谷和則様 (ガスクロマトグラフィー研究懇談会運営委員)をはじめ、このような心に残る素晴らしい研究会・見学会を企画してくださりました(株)伊藤園の皆様に心より御礼を申し上げます。

〔アサヒビール株式会社 酒類技術研究所 岸本 徹〕

 

 

 

 


 

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