多検体高密度濃縮装置を用いた環境試料の前処理

上山謙一郎(柴田科学(株)環境エンジ部汎用分析課)

 近年、環境ホルモンや難分解性有機汚染物質(POPs)など有害化学物質による環境汚染が問題になっているが、こうした汚染物質の分析は煩雑な前処理を行う必要がある場合が多い。対象とする物質はますます多岐にわたる上に、きわめて低濃度領域の試料が多く、前処理として濃縮操作を必要とされるようになって来た。こうした高濃縮操作は一般的に長時間を必要とし、分析上の一つのネックとなっていた。本報ではこうした濃縮作業を迅速に処理可能とする多検体高密度濃縮装置の環境試料への応用例を紹介する。
 多検体高密度濃縮装置 Syncore Analyst は、ロータリーエバポレーターとクデルナダニッシュ濃縮器の特徴を一体化した自動濃縮装置で、多数の試料を乾固させることなく、効率よく処理が行える。
 接液、接ガス部は不活性な材質(PFAコーティング)を採用し、コンタミを最小限にしている。

 水平回転の振とう撹拌方式を採用し、突沸を防止。

 最大6検体(1検体250ml)を減圧容器内で素速く濃縮する。

 濃縮操作は自動化しており、多検体を同一に濃縮可能である。

 試料は約1mlまで濃縮可能。

 右表のように、各溶媒ともに数十分から1時間程度で約1mlまで濃縮可能。回収率も95%以上と良好である。
 専用のバキュームシステム低温循環槽を用いることにより、作業環境への溶剤の放出を最小限に。